道は季節を伝え、懐かしさを呼び戻す。
−「道」を語る本−
小道の収集 長田 弘著/講談社
詩人、長田弘のエッセー集である。日々の暮らしの中で、人々が忘れかけていたものを思い出させてくれる。小道もそのひとつである。小道はただ通り抜けるだけのためにあるのに、ふだん見えないようなものが見えてくる。
故郷へ帰る道 安野光雄著/岩波書店
安野光雅は画家であるのか、文筆家であるのか分からなくなる。 科学、文学、音楽と多岐に渡って話題はつきない。安野光雅の故郷は山口県津和野である。森鴎外と同郷である。
前に読んだ本に、「津和野で有名な人は鴎外と西周(にしあまね)だ」とタクシーの運転手に言われ、 「もうひとり忘れていないか」と問う、石松の三十石船を思わせる文があった。
ゾマーさんのこと パトリック・ジュースキント著/文藝春秋社
ゾマーさんは朝早くから夜遅くまで辺り一帯を歩きまわっている。一日だって歩いていない日はなかった。 雪が舞い下りようと雹が降ろうと、嵐であろうと、どしゃ降りの雨であろうと、太陽が照りつけていようといつも歩いていた。
しかも日の出る前に出かけ、夜遅く月が空にかかる頃戻ってくる。 何の用があるというわけでもなく、リュックサックにバターパンと水筒と雨具を入れて、ただひたすら歩きつづける。
深い嘆きを秘めているようでもあった。心の底で何かに対して怒っているらしい。 戦争中のある秋の夜、湖の中へずんずん歩いていくゾマーさんを、ぼくは見ていた。
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